私の作品は「光」や「電波」、「水、水蒸気」や「風」、「土」といった生物、無生物の区別なく存在する流転のエネルギーにインスピレーションを受けたものが主になっています。
作品に多く用いた「直線」と「曲線及びスパイラル」は私たちの視覚で捉えられる色彩、形態、運動の軌跡を表わし、同時に視覚では捉えることのできない電波や風、温度というもののイメージを重ねています。 直線、曲線によって生命の躍動を表現した作家は過去から現在に至まで連なり、私たち人間にとって非常に解りやすい表現方法の一つではないかと思っています。 特に「東洋の文化」に於いてその手法は多くの分野で用いられており、書道の草書体、華道の花木、誕生から冠婚葬祭まで密接な水引細工、仏像の光背など、生命の息吹や生命の源を表現しているものと不可分です。
インドのマンダラやチャクラ(光輪)、チベットのタンカなどは既にシンボルとして定型化していますし、中国や日本の水墨画にも幽玄な神仙世界を表現したものが多くあり、それらに共通した表現方法を取り上げてみると、視覚で捉えにくい「生命の躍動」を直線と曲線の組み合わせで描き表わしているものが多くあります。 近年、テクノロジーの進歩に伴って、生命の最小単位から宇宙の創成までを身近に感じることができるようになりました。顕微鏡で見られる生命の不思議、天体望遠鏡や電波望遠鏡による宇宙空間の解析など、私たちを取り巻く世界の再認識がされつつあります。
科学技術が進む中で、私は心で感じた「幽玄なる生命の神秘」を表現して行こうと思っています。
こころで捉えた「光」、「風」、「水」、「土」、「音」、「温度」の世界をお楽しみ頂ければ幸いです。