作品について I(プロセス) 森田脩基

 曲線による作品を確立し始めたのは1984年頃からでした。  もともとヴァン・ゴッホの絵画に見られるような、力強い曲線が生命の躍動をストレートに表していることに強い感銘と影響を受けていたので、それ以前も曲線のみで構成した作品は描き続けていたのですが、表現というよりは描く行為が楽しくて無我夢中で描き続けていたように思います。

 表現方法として曲線を捉えるようになって、「曲線」、「螺旋」、はそれ自体が生命的な形態ではないかと考えるようになり、顕微鏡でみられる世界や天体望遠鏡の中に広がる世界も、普段私たちが見ている世界以上に曲線や螺旋で満ち溢れていることに気が付きました。

 それでも生命の状態を曲線のみで表わすことは大変難しく、表現方法を求めて中国や日本の水墨画に傾倒したり、東洋医学の「気」というものに強く惹かれていきました。この幽玄的世界は私にある種のインスピレーションを与え、そのスピリチュアルなものを表現したいという衝動によって制作に勢いがでてきました。  1993年あたりからの作品は単色傾向になり、ボカシを入れることでより不確定なものを表現しようと考えるようになりました。そしてこの頃から私は、これまでずっと追い求めてきたものが「カオス(混沌)の世界」だったということに気付いたのです。

 1996年からは次第にゆるやかな運動の方向性を加え、「動」と「静」に分化させたりと試行錯誤を繰り返すうちに、画面全体に美しいスピリチュアルエネルギーが脈々と流れている様子、状態を「生命を感じるような曲線」で表現したいと思うようになりました。画面全体に微細な光の糸が散らばり、または束になって流れている「光のバイブレーション」の世界は、現在までに至っているテーマです。そして、また新たな作風も生まれました。

 今まで多くの方々から私の作品について興味深い感想を頂きました。「深海のようだ。」とか、「宇宙空間のようだ。」または「遥か遠い過去の体験を思い出させる懐かしい世界だ。」と言う方もみえました。さらに「魂の根源のようだ。」と形容する方までみえたのには私自身が驚きました。  この感性豊かな方たちの感想や反応から、私が表現しようとしている世界が「私」だけのものではなく、多くの方たちと共有している世界ではないかと思うようになりました。

 そして、より広く発展させるためにも多くの方々に作品を観て頂くことを強く望んでいます。